糖尿病等治療例

当クリニックで健康診断、人間ドックを受診された方が自覚症状の全くない状態で、がんや生活習慣病が見つかり、早期に治療した結果として元気に元の生活に戻られることがあります。がんはもちろんのこと生活習慣病も早期発見、早期治療によりQOL(生活の質)を維持することができます。

特に糖尿病は発病時より適切な治療を行い、合併症を予防することで、その後の長い人生を平穏に過ごすことができます。最近は新しいさまざまな糖尿病治療薬が発売されており、患者さんの病態に合わせた治療を行うことができるようになっています。また発病早期からインスリン治療を導入することで、膵臓のインスリン分泌機能が回復し、インスリン治療を離脱できる症例も時にあります。

42歳 男性/会社員

2型糖尿病/身長170cm/体重71kg/BMI24.6

毎年当クリニックの人間ドックを受けていましたが糖尿病は認めませんでした。5年後人間ドックでは以下のように糖尿病状態でしたが、自覚症状はありませんでした。

空腹時血糖   237 mg/dl (基準値70~109)
HbA1c※   10.7 % (基準値4.6~6.2)

※HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) : 過去1~2か月の平均血糖値を反映するもので、6.5%をこえると糖尿病と診断します。糖尿病治療の指標の一つで、7.0%未満が治療目標です。

治療と経過

入院可能とのことで、病診連携先の糖尿病専門病院に紹介入院となりました。入院直後より糖尿病治療食とインスリン治療を開始し、約2週間で退院しました。以後、当クリニックにて外来治療を継続しましたが、ご本人が食事療法と運動療法を積極的に続けた結果、急速に血糖コントロールは改善しました。インスリン治療を終了して経口薬に変更し、さらに6か月後にはその経口薬も必要なくなりました。その後も当クリニックに時々来院して血糖値をみていますが、良好な血糖コントロールを維持しています。

院長より一言

早期の入院によるインスリン治療導入が効を奏して、6か月でインスリンや投薬治療を離脱した症例です。何よりもご本人が糖尿病治療に真剣に取り組んでいただいた結果だと思います。早期よりの適切な治療の結果が良い形で実を結びました。今後も現在の食事療法と運動療法の継続を期待しています。

61歳 女性/主婦

定期的な検査は受けておらず、体調も悪くありませんが、たまたま当クリニックで検診を受けました。しかし以下のように糖尿病であることを初めて知りました。

空腹時血糖   311 mg/dl
HbA1c   14.1 %

治療と経過

HbA1cがかなり高いために入院治療をお勧めしましたが、どうしてもできないとのことでした。外来通院でインスリン治療と食事療法を開始しました。ご本人も食事療法と運動療法を努力され治療開始4か月後にはHbA1c6.1%まで急速に改善し、現在もインスリン治療を続けながら、食事療法と運動療法に取り組んでおられます。日々元気な毎日を送られています。

院長より一言

外来でのインスリン治療導入となりましたが、しっかりとインスリン自己注射をできるようになり、努力した結果として、このように血糖値が改善されました。ご本人の努力のたまものです。

46歳 男性/会社員

2型糖尿病/身長181cm/体重88kg/BMI26.9

4~5年前から当クリニックの人間ドックを受診し、軽い耐糖能障害がありましたが、治療はしていませんでした。自覚症状はありませんが、2か月で4?の体重減少があったとの事で人間ドックを受診され、糖尿病が悪化していることが分かりました。

空腹時血糖   320 mg/dl
HbA1c   11.0 %

治療と経過

仕事が休めないとのことで入院治療は断念し、外来でインスリン自己注射を開始しました。同時に食事療法も強化したところ、治療開始3か月でHbA1c5.9%と正常血糖領域まで改善しました。その後数か月でインスリン治療を終了し、現在は経口薬1剤のみで良好な血糖コントロールを維持しています。

院長より一言

人間ドックを受けたことにより、糖尿病合併症のない比較的早い時期に糖尿病の悪化を発見できました。すぐにインスリン治療を受けたことにより数か月で糖尿病が改善しています。この症例のように糖尿病を発症していても、あまり自覚症状がなくご本人の病識もない患者さんもよく見かけられますので、定期的な健診を受けることが大事です。

25歳 男性/会社員

2型糖尿病/身長172cm/体重115kg/BMI38.9

毎年職場の検診を受けていましたが、糖尿病を指摘されたことはなかったそうです。2か月で約10?の体重減少があり、感冒様症状と全身倦怠感を訴えて当クリニックを初診しました。このとき尿糖強陽性であり、糖尿病を初めて指摘されました。

空腹時血糖   542 mg/dl
HbA1c   11.0 %

治療と経過

入院での治療を勧めましたが、仕事の関係上すぐには無理との事で、外来でインスリン治療を開始しました。3日後に入院治療を承諾していただきましたので病診連携先の糖尿病専門病院に紹介入院しました。約2週間の入院治療で食事・運動療法に真剣に取り組まれ、体重減量とともに血糖値は改善しました。9か月後にはインスリン治療を終了し、経口薬のみで血糖値は安定しました。その後約2年経過して経口薬も不要となり、現在は食事・運動療法のみで良好な血糖値を維持できています。

院長より一言

この症例は発病が比較的急激で、自覚症状も伴っており、当クリニックを受診されて糖尿病を初めて指摘されました。早期にインスリン治療を開始したことで膵臓からのインスリン分泌能が回復し、ついにはのみ薬さえ必要なくなっています。

52歳 女性/主婦

1型糖尿病/身長158cm/体重49.5kg/BMI19.8

11歳の時に発症し、インスリン治療を開始しています。近医で治療中でしたが、ご本人の希望で当クリニックに転院されました。非常に上手にインスリン治療(1日4回注射)を継続されており、HbA1c7%前後で糖尿病合併症は全くなく、2児のお母さんとしてジョギングなどを楽しみながら元気に生活されています。

空腹時血糖   542 mg/dl
HbA1c   11.0 %

副院長より一言

40年以上にわたって、自己血糖測定を定期的にしながら、きっちりとしたインスリン治療を継続されています。血糖コントロールも非常によく、糖尿病合併症はなく、元気なお子さんも2人出産されています。ご両親及びご本人の治療に対する取り組みがよかったのであろうと感激しています。

55歳 男性/会社員

2型糖尿病/身長177cm/体重72kg/BMI23.0

前年に糖尿病と診断され、経口糖尿病薬で治療していましたが、血糖値が良くならないと初診されました。

空腹時血糖   222 mg/dl
HbA1c   8.4 %

治療と経過

しばらく経口薬治療を続けましたが、HbA1c10.7%まで上昇し、インスリン治療への変更をお勧めしました。外来にてインスリン治療を導入し、半年程度でHbA1c7.0%前後にまで改善しました。インスリン治療開始直後より体調が良くなったと自覚されています。現在1日2回のインスリン注射でHbA1c6.5%前後で安定しており、元気にすごされています。

院長より一言

この症例は自身の膵臓からのインスリン分泌能力が低下しており、インスリン治療が必要と判断しました。ご本人に納得いただきインスリン治療を開始したところ、急速に血糖コントロールは改善しました。インスリン治療が必要な場合にはできるだけ早期に開始するべきとの典型的な症例でした。

60歳 男性/会社員

睡眠時無呼吸症候群、2型糖尿病/身長166.5cm/体重71.4kg/BMI25.7

治療と経過

以前より就寝中にいびきがひどく、妻より無呼吸が長く続くといわれたと当クリニックの人間ドック受診時に相談を受けました。総合病院耳鼻科を紹介し検査をすると睡眠中に10秒以上の無呼吸が15回/時間も続いていることが分かり、睡眠時無呼吸症候群の診断を受けました。薬物治療と咽頭形成術を受けましたが症状はあまりよくなりませんでした。
以前からHbA1c6.5%程度の軽い糖尿病があったことと、さらにいびきと肥満の関連性もあり、肥満の解消を目的に歩くことをお勧めしました。早朝犬を連れて散歩を始めたところ、減量とともに体力もつき、睡眠時無呼吸状態が改善しました。定年後は週に2~3回ゴルフに行っても疲れないと喜んでいます。現在も当クリニック外来通院されています。

院長より一言

定年前後に当クリニックで人間ドックを受診されたことをきっかけに、睡眠時無呼吸症候群と診断されましたが、ご自分の努力で克服されました。ここで重要なことは60歳前後で病気をきっかけとして、ご自身が生活習慣を改め、それ以前より元気になったということです。

55歳 女性/主婦

2型糖尿病/身長158cm/体重49kg/BMI19.6

20年間血液検査をしておらず、自覚症状はないですが、たまたま自宅で尿糖検査をしたら陽性だったと初診しました。初診時の検査結果で初めて糖尿病と診断されました。

空腹時血糖   336 mg/dl
HbA1c   11.1 %

治療と経過

入院治療をお勧めしましたが、ご家族の介護があり入院できないとのことで、外来でインスリン治療を開始しました。血糖値は急速に低下し、3か月後にはHbA1c5.6%と正常領域まで改善しました。
現在はインスリンを一日一回注射して良好な血糖値を維持できています。インスリン治療を開始して体がすごく軽くなったと喜んでおられます。

院長より一言

自覚症状はありませんが、かなりな高血糖を初めて指摘されています。早急なインスリン治療の開始により糖尿病合併症はごく軽いものに留まっています。治療前に自覚症状がない場合でも、高血糖が解除されると体が楽になったなど、治療前は不健康な状態であったことを実感される方は多いです。

39歳 女性/会社員

2型糖尿病、うつ病/身長159cm/体重81.8kg/BMI32.4

1年前に糖尿病を指摘され、近医で経口薬治療をしていましたが、糖尿病専門医のもとでの治療を希望され、初診されました。初診時の検査ではあまり良い血糖コントロールとは言えませんでした。

空腹時血糖   131 mg/dl
HbA1c   7.7 %

治療と経過

食欲を我慢しなければいけないのは理解しているのですが、我慢しきれなくなり過食となり、自己嫌悪に陥るといったことを繰り返していました。少しでも食欲が抑えられて減量できればと、インスリンではありませんが糖尿病注射薬のGLP-1アナログを開始しました。間食が減って食欲は少し減ったとの感想で、HbA1c7%前後で推移しています。

院長より一言

最近、糖尿病治療に対する新薬がたくさん発売されています。糖尿病患者さんの治療の選択肢が増えたことは歓迎されることですが、逆に専門医でないと糖尿病薬の使い分けが難しくなっています。当クリニックでは糖尿病診療経験20年以上のベテラン専門医2名が患者さんの病態にあった糖尿病治療を目指しています。

40歳 男性/会社員

2型糖尿病/身長177cm/体重96kg/BMI30.6

1年前の健診で軽い糖尿病で食事療法が必要と言われたが真剣に取り組んでいなかったようです。今年の健診で糖尿病が悪くなっているといわれて初診しました。

空腹時血糖   172 mg/dl
HbA1c   9.0 %

治療と経過

ご本人の希望もあり、新薬の尿糖排泄促進薬(SGLT2阻害薬)を開始しました。1か月後来院時には体重が6?減っており、HbA1c7.3%と急速に改善していました。2か月後には10?体重が減っており、HbA1c5.6%と正常範囲まで改善しており、ご本人は非常に喜んでいます。新薬は終了の予定ですが、今後も食事療法と運動療法を頑張るとの決意をしておられます。

院長より一言

体重減少効果など他の糖尿病経口薬にはない特徴を持っている尿糖排泄促進薬(SGLT2阻害薬)ですが、適当でない症例に使用すると副作用が前面に出てしまうことがあります。新薬開発時よりかかわっており、薬剤特性はしっかり把握できていますので、この症例は有効であろうとの予測で開始したところ、著効しました。体重が減ったことで治療への意欲も出ており、上手に使用すれば非常に良い薬と考えています。